1/1破
懐かしい調べ
今では耳に触れる世界の音の全てがいとおしく感じられる
吹き抜ける夜風
湿った風が宵の艶めかしい香を運ぶ
軋む木片
肌を包む冷気
世界全てが懐かしく
そして愛しい
私の中で何かが激しく疼く
私はまた人を殺したのだろうか
昨日までその思考に捕われていた私は
今頭の中に何もない
弱々しく光る空の星に手を伸ばす
血のこびり付いた部屋
磔にされた数多の少女は
内臓が引き抜かれていた
あの男を殺した事は
悔いる事の理由もない
血のこびり付いた町
殺され続けた数多の子供は
皆夢を奪われた
あの男たちを殺した事は
悼む事の理由もない
本能が告げている
私の望みが叶ったのだと
破壊と言う名の創造で
生命の剥奪は私の使命だと
口を開くと出てくる呪文がある
此処が何処なのか私は知っている
私は何者なのか
もうすぐ分かる時が来る
そうして指の一本が欠けた手をかざす
気配もなく目の前に現れて
私に微笑みかけた少女も
指の一本欠けた手をかざす
黒衣がゆらめく
微かに漂う血の香り
酸素に触れた赤染のドレス
彼女の口は私と同時に開いた
『Scry aau saomn jo』
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