†Correnda†
ルバルフェルタ
1/1破

キャロルは二人の男に両腕を縛られ、無理やり膝立ちさせられていた。
そして、その目の前で仁王立ちしているグランダルスは、キャロルの口に銃口を押し込んでいる。

「保安長に追い掛けられていたと言うことは、お前は犯罪者というわけだ。今すぐ打ち殺してやってもいいのだが…」

グランダルスは開いている左手の指で髭を摘む様な仕草をして、嫌らしく笑ってみせた。

「子供たちに関しては情報が少ない。間違って一般人の子供を射殺しかねん。作業を円滑にするためにも、君の仲間の名前と、どこで働いているか…教えてもらおうか…?」

グランダルスは銃口を離した。

が、キャロルはグランダルスを反抗的な瞳で見返した。

「言うわけないでしょ!?」

…そうキャロルが言い終わった瞬間だった。

パン!という銃声…。

打ち抜かれたのは、キャロルだった。

左肩を打ち抜かれ、そこから放物線を描く様に血が噴き出した。

キャロルは小さく悲鳴を上げて、床に蹲る。
左肩を押さえ、小さく唸り続けている。

「三人だ…三人の名前と居場所を言え!それで解放しよう」

グランダルスが銃を構え罵るように叫んだ。
鋭い眼光がキャロルの華奢な体躯を刺し留める様に睨み付けている…
キャロルは顔を歪め苦しみながらも、隙を見る様にして立ち上がり、駆け出した。
手は縛られていたが、足は無事だったため、少し暴れて二人の男を振り切るとそのまま駆け出す事ができた。

だが、グランダルスは少しも焦らなかった。
表情を変えず、静かに…しかし素早く銃を構え、発砲した。

銃弾はでたらめに動くキャロルの足を正確に捕らえた。

キャロルの右の太股からは血が弾ける。
そして、彼女は崩れ落ちた。

パン!パン!

グランダルスは崩れ落ちたキャロルにゆっくり近づきながら、両の足にまた一発ずつ銃弾を打ち込んだ。

キャロルがたまらずに擦れた声を漏らし、叫んだ。

体をのた打たせたり、じっとして震えたりと悶え苦しむその姿は、見ているだけで痛々しかった。

…その頃にはもう近くに一般人は居なかった。

柱の陰に立ち呆然と立ち尽くす俺と、血を床にばらまき倒れているキャロル。
その頭に銃を突き付けているグランダルス、その後ろに構える二人の男…

それと…今走って駆け付けたリドル…。

近くまで駆けつけたが、キャロルを見留めその足を止める。
目を見開き、一歩下がりかけた。
だが、踏みとどまって、また一歩前へ出る。

そこで息を潜め、屈んだ。


「さぁ、どうする?急所は外してる。まだ間に合うぞ?」

グランダルスは悶えるキャロルの頭を銃でこづき、鼻で笑いながら言った。


「…殺して…殺してよ…」

キャロルは涙で顔をくしゃくしゃにして、擦きったその声を喉から絞りだすように叫んだ。
細くて、ちぎれそうな…そんなか弱い声だ。


パン!!

銃声がなる。

「あああぁぁぁあぁあ!!!」

キャロルが叫ぶ。
銃弾が仕留めたのは、キャロルの右肩だった。



「どうするんだ?」





グランダルスが問い詰める。


もう、限界だった。

左右の肩に両の足…体中血が吹き出し血塗れで、あちこちが痛くてたまらない筈だ…。
解放されたくて…、苦しくて、辛かったのだろう

誰だってああなれば、我は通せまい。
ましてやあんな子供が、ここまで保もったのが凄い事だ。



…キャロルは、弱々しく唇を開いた。



−ごめん…



…涙を流しながら震える声で嘆いたのは、その一言だった。




−…リドル…

その、建物の陰にいます




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