1/1頁 何をしても満たされない毎日が疎ましかった。 常に何かをしていても、やりたいことは溢れて出てきて、やらなければならないことも溢れ出てくる。 かといって全てを放棄すれば、俺は後悔した人生を歩む事になるのだろう。 ほんとうにそうなのだろうか。 「お前だけいればいいよ」 「おっ?」 呟くと、バカが振り向いた。 試しに呟いてみただけなのに、そんな顔をして振り向かれたら、どう弁解したらいいか分からなくなる。 「…って、言えたらいいのにな」 何かもの淋しい気持ちを抱えながら俺はそう付け足した。 「なんだそりゃ!今言ってたじゃねぇか!俺聞いたかんな!!」 満面の笑みでバカが吠えた。 …人生にやり直しはありえない。 今俺が言った言葉も、思想も、今までの瞬間瞬間を消す事は何があっても俺には出来ない。 「だいっ嫌いだ!」 「えぇ!?」 バカが大袈裟に驚いた顔をした。 「…って言ったら、お前どうする?」 「なんだ!びっくりさせんなよ!」 やり直しがきかないから、わからなくてもやるしかない。 今の言葉も、全てを背負わなくてはいけない。 そうやって積み重なっていく人生が重くて、重くて、それで、疎ましかった。 「…またさ、なんか考えてんだろ?むっずかしいことー」 バカが俺の目を見ながら言った。 たまの休みが合ったものだから、二人で海にきていたのだ。 「俺と、一緒に、海。…これ、最高じゃね?」 バカが口から焼きそばをぼろぼろこぼしながら言った。 「俺と一緒、ぜってーたのしい!俺と一緒ならどんなこともたのしい!俺は、生きてるお前見てるだけでたのしい!お前は、生きてる俺を見てるだけでたのしい!」 バカが、箸を突き上げて楽しげに叫んだ。 「お前バカだな」 「バカじゃねぇよ!ほんとのこと!仕事も趣味も会話も海も、お前がいれば全部キラキラしてる!俺はずっと幸せで、怖いけど、怖いのも幸せ!全部が幸せ!」 バカが大声で叫んだ。 「お前は?」 ニッと笑いながら、バカが俺に聞く。 答える気はしなかった。 なぜだか自然と口元が緩んで、 ああ、なんだ、俺ってバカだな。 と、そう思った。 「…準平、バカっていいな」 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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