凍り付く様な
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まるで内蔵から異物がうねりながら出てくる様な感覚だった。
世界で一番好きな彼と三秒間目が合ってしまった。
彼は何も無かったかの様にそこを通りすぎ、帰宅しようとした。
その三秒間が過ぎて新しい時間が刻まれて行くにつれて頭のもやが増えていく。
吐き気がする衝撃。
あたまが激しく唸ってゆれている。
血が、廻っているのだ。
明日と明後日と、全てを見る目が絶えると、肉体は本能で動いた。
部屋を出てエレベーターに乗り込む彼を追い、彼のネクタイを掴んだのは私の肉体だった。
エレベーターの奥へ押して、扉が閉まったかなんて気にする間もなく、私は彼に顔を近付けて唇を重ねた。

それはチョコレートの味がした。


エレベーターが一階までついて扉が開く頃には私はもう彼のネクタイから手を離し、扉に向き直っていた。
扉が開き、一歩外へ。
そのまま階段を使って上へ上ろうとするとき、まだエレベーターから降りていない彼に気付き、そちらを一瞥した。


ぽかんとした彼の顔が無性に腹立たしくなった。

彼は私と目を合わせることなく、ゆっくりとエレベーターの扉は閉まった。
後に残ったのは、私の眼前に広がる、長い長い黄色い階段だけだった。



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