インソムニア・ヴィル
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「生きてる…?」

漆黒の髪を持つ男は、隣に横たわっている純白の少女の頬を撫でた。

「生きてるよ」

少女は薄く目を開けて、頬を撫でる男の手を優しく撫でた。

「よかった」

漆黒のベッドだった。漆黒のシーツにくるまれて、男は安堵した様に微笑んだ。

「ジョゼ、人はね、寝ないと死んでしまうの」

漆黒のシーツに、彼女の純白の長い髪が映える。

「僕にはそれが分からない…。君は、夜の闇に溶けてしまう。僕は一人だ、怖いよ、怖い。」

男が蹲ると、少女は男の背中に手を回して、言った。

「あなたは闇なのに、夜の闇を恐れるのね。私が溶けても、あなたは独りじゃないよ。」

「独りではなくても一人だ。僕を夜の闇に一人にしないでおくれ、ルチス」

少女は、男に軽く口付けをした。

「今夜だけは我慢して、ジョゼ。明日はロドルスを呼ぼう?」

「僕、あいつ嫌いだ。あいつは闇に俺を溶かそうとする。一人の夜よりも怖いよ。」

「うそね、ジョゼ、あなた、一人の夜、泣いているじゃない。」

「泣いてなんか…いない。」

少女は瞳をかたく閉じた。

「寝るの?」

「うん。今日は、もう、眠いよ。」

「…おやすみ、」

少女の返事は無かった。
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