ショコラティエール
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今日こそ君に会おうと思って家を出た。
降り積もる雪を踏みならして走る道はまるで物語の中の世界だった。
哲学的な君の思想がもっと知りたくて、沢山君の言葉を思い出しながら走る。

「不安定だからこそ人はいつだって愛しいよ、狂おしいくらいにね。」

なんでもない常識だって、思索を愛する君の口から放たれればそれはキラキラと輝いて僕の目を輝かせるんだ。

「確定という言葉が織り成す不確定という常識を打ち壊して、真実と知って!」

意味なんて君に聞けばいいじゃないか、だからもうそれは沢山思い出すんだ。
何が真実かなんて疑いだした君の横顔も、誰かに愛されていて、それに気付いて、満たされている君の顔も愛しくて、ただ苦しくて、然し君は今日は家で1人でいるんだろう?
だったら今からの時間は一分一秒まで全部僕のものにしていいだろう?

「言葉という常識が縛っている思想を頂戴、こんな我儘でも…」

君へのお土産は途中で買ったショコラティエール。
押し付けがましい僕の行為も受け取ってくれる、そんな君にまた会えるといいな。

そして僕は君の顔を思い出す度にため息をついて、何を話そうか考えるのに、いざ君が目の前で僕の名前を呼べば、言葉だって、息だってつまってしまって挨拶しかできなくなるに決まってるじゃないか。

「やぁ、今日の天気は君の瞳にはどう映った?」

そこでこれを差し出すんだ。
こんなに甘いショコラティエールだから。


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