ニュー・ビール
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初めて入った居酒屋だった。

明日が休日ときたら多少飲み過ぎてしまうのは、俺にだってわかる。
でもそれにしたって今日のツレはちょっと飲み過ぎだ。
いや、量だけ見れば別に飲み過ぎって程でも無かったのだが、酒に弱いツレの事を考えるとやはり飲み過ぎだ。
おかしいと思って事情を聞いてみると、どうやらツレは彼女と別れたらしい。
年中惚気話ばかり聞かされていた俺からしたら、少し意外ではあった。
だが、やっとそれで普段は自分から誘ったりはしないツレが今日は自分から俺を誘ったワケが分かった。

「そんで、俺に慰めてほしいのかよ?」

「べつにぃ…。」

ツレはふてくさた様に返事をした。
それを見て俺は少し笑ってしまう。

「人の不幸は蜜の味…かよ?」

ツレが紅潮した顔をこちらに向けて言った。
どうやら、俺が笑ったのをみて勘違いしたらしい。

「いや、そんなに悪い性格はしてねーつもりだけど?」

弁解してみるが、どうやら疑いは晴れていないらしい。
ツレは訝しげな顔で俺を睨みけた。

「…なんなら試してみるか?」

「どうやってだよ?」

「ウチで飲み直そうぜ?どうせ明日休みだし、別れたんなら他に予定もないだろ?」

俺の言葉にツレはまたムッとしたが、飲み直すことに関しては意外にあっさりと了解してくれた。

「もっとウマい酒、飲ましてやろうか?」

「お、おう。」

俺は半ば面白い玩具を家に持ち帰る様な気分で店を出た。
そういえばツレを家に呼ぶのは初めてだった。
今日は新しい酒でも開けて、ツレを慰めてやろうと思う。
店を出ても暫く、ツレの顔は紅かった。
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