エス ティ エイ エル ケイ
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昼休み。
周りには友達がたくさん集まる。それで、他愛の無い話をエンドレスに繰り返して、笑い合って弁当を食べる。
そんな中、君はいつも後ろの方で1人でポツンとしている。
淋しい訳では無さそうで、一匹狼なんて言葉がお似合いだ。
そんな君が黙々と弁当を食べているのを見る。
皆の話そっちのけだ。
時々相槌を打って、笑っておけば成り立つのだ。
ポツンと1人で弁当を食べるのは、どういう気分なんだろう。
君が食べている弁当は、バランスがとれているみたいだ。
三角食べみたいな事をしている。それがあまりにも君のイメージと違って、思わず笑ってしまった。

「どうしたんだよ、英田?」

「いや」

可笑しなタイミングで笑ったので、皆は不思議そうな顔をした。
でも興味は絶えなくて、また君の方を見た。
すると今度は、君は机に突っ伏して寝ていた。
ずっと見ていても顔を上げてはくれなかった。
そんな事をしている間に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ってしまった。
自分の弁当は幾らも食べ終わっていなかった。
午後の授業は後ろの君が気になって仕方がなかった。
振り返るわけにもいかず、どうしようもなくただひたすらにペンを回していた。
帰宅路。
君は反対方向だ。
曲がり角で君の背中が見えなくなると、肩を落として帰宅路についた。
次の日。
君は学校に来なかった。
理由は分からなかった。
その次の日も、君は学校を休んだ。
先生にも連絡は行っていない様だった。

三日目、やっと君は学校に来た。
変わらず、1人でポツンと弁当を食べていた。
その日は何故かコンビニ弁当だった。バランスは悪そうだった。
帰宅路。
気付くと、反対の路について君の跡を跟けていた。
自転車はあったけど、君は歩きだったので、歩きで跟けた。
家が、近いのかもしれない。
3つ角を曲がって、橋を一つ曲がった所で、君がいきなり走りだした。
跡を追った。多分、気付かれたんだと思った。
君は足が速かったけれど、勘で回り込むと、ぎゅっと真正面から君の両の肩を掴んだ。
君は、暫く黙っていた。
息は切れていて、じっとこちらを見つめていた。

「………なんだよ」

落ち着いてから、君は言った。

返す言葉は見つからなかった。
寧ろ、一つも君には用がなかった。
商店街、そこそこに人がいる。
その雑踏に紛れて、二人は暫く沈黙していた。
蝉の声が煩いくらいに響いた。
それ以上に、二人の息遣いは荒かった。
走ったのと、緊張感からくるのは明白だった。
それから暫くして、やっと口が開けた。
心臓は大きく鼓動しているのが分かった。
そうして、気付いた。
或いは気付いたから、出た言葉かもしれない。


「…一緒に、」




その先は出なかった。
君の帰宅路は反対だから、躊躇われた。

そこで君が、落ち着いて、然し唐突だった。
言った。

「エス」

最初は意味が分からなかった。
だが、暫くすると、君は語調を変えず、極めて冷静に続けた。

「ティ…エイ、エル」

そして、最後に

「ケイ」



そんな君には思わず、笑ってしまった。
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