本日は俄かに雨が降ります様で
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何時もと同じ様に黄色く曳かれた線に両の足の親指の辺りを引掛けて、おれは立つて居た。
無表情で、其な自分の顔が嫌では在つたけれども、楽しい事も無ければ笑えや為無い。
其よりか、電車が遣つて来る迄後十分も在るのかと思うと気が滅入つた。
昨日と比べて空は曇つて居た。
然し其でも気温は高い。
御負けに湿気が酷く、気分の悪かつたおれには此処が地獄の様で在つた。
此な時は、極つて今日出会つたひとに就いて考える。
感傷に浸つて居る訳では無く、暇潰しと、子供の頃に気取つて為て居た人間観察が癖に成つた所為で有る。
ひととは、淋しい生物で在る。
幾ら虚飾つて居ても、依存出来る他者を求めて互いに凭れ合いながら生きて行く事に満足感を覚えるので在ろうか。
ひとと付き合うのは、おれに取つて為て観れば苦痛以外の何物でも無かつた。
唯、ひとには備え付け悲しみたいだとか、痛みを感じたいとか怖い思いを為たいだとかと云う欲望が有るらしい。
故、おれにも友を慕う精神が備わつて居るので在ろう。
然し、其でも矢張り多くの人間と付き合うのはおれの望まぬ所に在つた。
而して、幾らか見る機会が在つて其中で惹かれた人物や、自分に好意的で尚且つ積極的に接して呉れる人物以外は極力関係を持た無い様に為て居るのは、決為て人間と云う物が嫌いな訳では無いのを、如何か解つて呉れたらな、と屡思うのだ。
然れども人は感覚的な一面を中途半端に持ち合わせて居る癖に、其割には余りに鈍感な生物で有る。
理想と為る所は儘、言葉に出為て言わ不ば解せぬと言うものも、又常で在る。
ひととは又、曖昧な世界に住為る生物だ。
時や場合に応じて意見と云う物は常に移ろふ。
ひとは、順応為る日々に埋没為、恒に同調と調和、其に同一である事を求めながら、一方では他者と違つて居る事を強く求める。
己個人の存在を浮き彫りに為て注目を求めるかの如く、僕を視てと言わんばかりに個性と云う物を主張為る。
おれも含め、ひととは何時迄経とうが子供の儘なので在る。
そう謂えば、おれは決めた。
拠所と成る事をだ。
其為て都合の好い刻のひとで在ろうと。
其がおれの求めて居るひとの望む処で在るからだ。
其な彼曰く、本日は俄かに雨が降ります様で、おれは彼に借り申した傘を持つて居るのだ。
其処に風が一陣吹いた。
其為て、続け様にもう一陣。
最初の一陣は山風の様に強引に吹き荒れた。
然し、其は何か悪い物も吹いて何処かへ飛ばす事も出来た様で在る。
証拠に、二陣目の風は柔らかく、何処か清々しく心に染込むものだつたからで在る。
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